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2022-06-29 11:25:00

競技の達人13 「ゼロの構えと滑る組手編」

こんにちは!

競技の達人Vol.13 「ゼロの構えと滑る組手編」

 

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2020年に発売された最新の組手技術が詰め込まれています。

このシリーズが発売した当初は、まだまだ幼かった月井 隼南選手ですが、立派なお姉さんです。

 

第13巻のテーマ、ゼロの構えとは「究極の脱力状態」を指します。そして滑る組手とは「ドンドン」と踏み込まず、マットを滑るように動く組手です。

普段から、突き / 踏み込み / 気合 をワンセットで稽古してきましたので、どんな風に組手が変化しているのか興味津々です。

 

 

「浮き身の構え」

古流沖縄空手の大城 利弘先生に、教授を受け月井先生自身が競技組手にアレンジされました。

浮き身をかける事により、「スピード・パワーの増加、相手に反応されない・自分の反応が早くなる」等様々な効果を得ることが出来ます。

 

DVDでは、浮き身歩行から説明されています。

 

1・前進・横歩き・後退

・骨盤で足を吊り上げるようにして歩く。(踵から浮かさず足裏全体から浮かし、同時に着地します)

 

2・90度歩行

・今度は、180度向きを変えながら歩行です。あくまでも腰で移動し単に上体は腰に乗っているだけです。(肩と腰を捻じらないようにします)

 

3・前屈立ち歩行

・ドンと強く着地せず音を立てず移動します。(出来る限り太ももの筋肉を使わず、腰のみで行います)

 

 

次にもっとも重要な要素である立ち方についてです。「止まっている時も、動いている時も常に浮き身をかけた状態でいます

浮き身のかけ方です。(平行立ち程度の歩幅でした)

 

①足心に重心を落とす(足心とは、足の中指の付け根から指3本分の位置です)

②土踏まずを浮かす

③踵をすかす(タオル1枚分の隙間くらい)

④骨盤で下肢を吊り上げる

 

浮き身をかけていない通常の立ち方だと、胸・肩・背中を軽く押されただけで簡単に崩れてしまいますが、浮き身をかけていればどの方向から圧力をかけられてもビクともしません。

DVDを観ながら(既に4回目)このブログを書いていますが、休憩がてら試しに浮き身をかけてみました。同じ力で娘に押してもらいましたが、通常の平行立ちとは明らかに違います。

立ち方ひとつで、ここまで効果が違うとは思ってもみませんでした。奥が深すぎます。

 

浮き身をかけると、単に立ち方が安定するだけでなく、突いた時に相手の反応が遅れるようです。

両者、平行立ちで向かい合い一方が上段追い突き、もう一方が受けます)

検証結果ですが、通常の突き方では相手は突きを流し受けていました。一方浮き身をかけた突きでは、しっかり顎を捉えていました。(受け手の反応が遅れていた)

 

 

浮き身は組手の構えにも応用出来ます。 「構えは、半身でも真半身(カニ構え)どちらでもOK」

①自然に立つ

②腰を落とす

③肘を曲げる

④足裏の重心を整える

⑤骨盤で下肢を吊り上げる

 

体重の軽い選手は、重い選手と比べパワーに関しては不利となりますが、浮き身をかけることで当たり負けしませんし、相手に足払いを仕掛けられても、浮き身構えを覚えていれば崩されることは無いかも知れませんね。

 

 

次に「線を外して蹴る」です。(ペア練習です)

蹴ると同時に線を外すことによって、相手のカウンターを断つことが出来ます。また足払いを仕掛ける時、数分の1の力で容易に崩すことが出来ます。

 

1本のラインを跨いでお互いが立ちます。

一方が回し蹴りを連続して行いますが、右足で蹴った時、身体全体がライン右のゾーンに、左足で蹴った時、身体全体がライン左のゾーンにあります。

また蹴りが極まった時、腰を切り身体が真横を向いているようにします。(股関節の外旋で線を外しながら蹴ります)

 

※線を外して蹴る練習は、裏回し蹴りは肩甲骨を寄せながら、足払いは低い体勢を保ちながら練習すれば応用可能です。

 

 

ここから、滑る組手の解説です。

滑る組手とは、上記で記しました「ゼロの構え」。ここから技を繰り出す時通常は前足から踏み込むことが多いと思います。前足を踏み込んだ時にも攻撃でき、後ろ足を寄せた時にも攻撃が出来る状態です。つまり、「歩くように」・「歩きながら」いつでも技が出せる状態を指します。

 

まずは直突きで感覚を覚える練習です。(腕の関節を抜くゼロの突き)

直突きが極まった時に腕に力を入れず終始、力を抜きます。(この時点で難しいです)手首・肘・肩の関節を抜くような感覚を持ちます。

力が抜けていれば、突きが極まった後、肘がほんの少し曲がっています。正しくは引くのではなく、間接を抜くのだそうです。

(このあと、チャタン前半の連続突きでお手本を見せてくれました。なるほど古流チャタンで突きが少しだけ緩い理由はこのためやったんですね)

他には、撞木立ちでスイッチしながら突く稽古方法等紹介されていました。突きと後ろ足の寄せを同時に行いますので組手に活きる基本練習と言えます。

自流派の形を撞木立ちに置き換え、練習することを勧められています。運足のスピード感と技のキレが格段に増した印象を受けました。

DVDでは剛柔流の撃砕第一と十二の形で、それぞれお手本を見せてくれています。

ポイントは正中線を動かさず、その場で行うことです。これで運足は「床を滑る」ように行えるはずです。

 

 

滑る組手基本編です。(より速く、より強く、相手の反応を遅らす)

浮き身の理論では、単発の突き(刻み突き、逆突き)は後ろ足を寄せた時に極めます。

中段突きは多少突き方は変わりますが、ドンっと足を鳴らす突き方はしません。(後ろ足スタート、すぐに前足)

 

DVDでは、お互いの攻撃が届かない(安全圏)間合いで技を出しています。遠間から、一気に間合いを詰める感じが一番近い表現かと思います。

逆上の入り方は参考になりました。

 

 

おまけでしょうか?跳ぶ組手上級編も入っています。(12巻で入れ忘れかな)

 

まずは基本の組手ステップのおさらいです。(左構えの場合)

前進する時は前足から、後退する時は後ろ足から。

右に移動する場合後ろ足から、左に移動する場合前足から。

ただし、移動時は構えを崩さないこと、正中線を相手に晒さないことです。

 

上記が出来る前提で、新たにオープンスタンス / クロススタンスからの跳ぶ組手の紹介です。

 

正中線を隠したまま(真半身)でステップを刻みながら、足をタタンっ!のリズムで足をオープン / クロスします。(床をタップする感じ)

 

跳ぶ組手とはジャンプする意味ではなく、始動時から技の出し終わりまで、両足とも床につけず左右どちらかの足だけか、もしくは両足とも空中にある状態のことを言います。

 

【オープンスタンスから前足 刻み蹴り】

前足で中段を蹴る時、単に前進して蹴るだけでは弱くなりがちです。

そこで床を2度タップしてオープンスタンスで蹴ると強い蹴りを出すことが出来ます。(蹴ったあとは相手の正面には立たず、背中の方に踏み出します)

 

【オープンスタンスから前足 上段裏回し蹴り】

オープンスタンスで中段蹴りの軌道を相手にわざと見せて、実際には裏回し蹴りに持っていく方法もあります。

 

【密着した状態からオープンスタンスで中段回し蹴り】

密着した状態でもオープンスタンスを取ることで、強い蹴りを放つことが出来ます。

相手の反撃を想定し、自分の前拳を相手の肩か顔に向けておきます。

 

【クロススタンスで中段回し蹴り】

後ろ足で蹴る場合は、後ろ足から床を2回タップしクロススタンスで蹴ります。

注意点は、股関節の外旋と前足を外に向けることです。

 

【クロススタンスから後ろ足 上段裏回し蹴り】

後ろ足で背中を蹴る軌道を相手に見せ、反対側を相手に極める方法もあります。

距離が遠い場合、軸足のスライドで距離を詰めます。

 

【密着した状態からクロススタンスで中段回し蹴り】

蹴る側の手を、蹴り終わりまで相手に向けておくことです。

 

 

跳ぶ組手応用編 (足裏で距離を調節する方法です)

 

刻み突き・上段逆突きの場合、遠くの相手に極めたい時は、足裏全体で踏み込むのではなく、「踵」から着地します。

これだけで30㎝遠くを突けるようです。

次に相手が先に来てしまった場合(自分の反応が遅れた場合)、その場で「上足底」を踏み込みます。そうすることで、距離の調節が可能となるようです。

踵から入ると距離が伸びるのは、感じていましたが、詰まった時の対処方は全く知りませんでした。

 

相手の攻撃の捌き方も紹介されています。

簡単に説明しますと、手を洗った時ハンカチが無くて手を払って水を取る動作です。私はずっとパーリングしてました。

 

DVDでは相手の中段逆突きを、

①「上足底」で間を切り

②(前拳)水しぶきを払う動作で突きを落とし

③(前拳)で刻み突きのカウンターを極めていました。

【後の先】です。

 

最後に、相手との間合いの詰め方が説明されています。

前足を置く位置ひとつで、相手の技が見えやすくなるといった内容でした。

相手が【先の先】が打てなくなり、自分が【後の先】を打つという訳です。

間合いを詰める時に、

「合い構え」:自分の前足と、相手の前足のラインを合わせます。

「逆構え」 :自分の後ろ足と相手の前足のラインを合わせます。

この理屈では、相手は技を極めにくく、自分はカウンターを取りやすくなるようです。

 

内容盛り沢山の第13巻。

組手競技において、めまぐるしく動きまわる中、常に浮き身であることは容易ではありませんが、試してみる価値はあると感じました。

かなりハイレベルな内容です。