Hello New Year!!
前編は丸ごとアップ。
基礎体力中心の内容で収録時間の約40パーセントを費やしていました。
4・スピードリンク脳トレ
5・反応力と反射力を強化する速射突き
6・準備と仕掛けのプッシング対応(中段突き 刻み突き 上段追い突き ワンツー 蹴り)
7・矢倉 一先生インタビュー
【スピードリンク脳トレ】
駆け引き、試合中相手の癖を見抜く分析力、論理的思考力、一瞬の判断力、これら空手脳は高いに越したことはありません。
以前道場で稽古前やジョグしながら両手ジャンケンして遊んでましたが、似たようなことを指導されています。
ペア相手と対面に向き合い平行立ちのままずっとステップしてリズムを刻みます。
ペア相手が先に両手でジャンケンを出します。
練習内容はこう。
勝ちパー(右)負けグー(左)と出せば、
負けグー(左)勝ちパー(右)と 出します。
出しますが、実際はその逆。
試合で相手の裏を取ろうと思えば練習でもその逆をしないといけませんので、
勝ちパー(右)負けグー(左)とくれば、
負けグー(左)勝ちパー(右)と反対を出すって訳です。
普段の練習から頭を使っていると即座に対応が出来るんでしょうね。
普通に勝ちの手を選ぶ時と逆の手を選ぶ時の2種類やってます。
それこそ小学校低学年から高校生まで一緒になって楽しみながら頭の体操やってます。
もちろん空手と一緒で足を止めてはいけません。
ずっとステップワークしながら行っています。
なぜでしょうか。
足が止まった瞬間相手が攻撃をしかけてくるから、足元の動きは止めません。
相手に「考えさせられない」訓練とのこと。
咄嗟の状況判断。
場数を踏む以外に、どうやってこのスキル鍛えたら良いのか知見がありませんでしたが、矢倉道場では頭の体操を取り入れられていました。
失敗したら、その場でスクワットして逆突き。
次の脳トレは「足し算」
ペア相手:5+2は?
自分 :7 (左)3・(右)4
ステップしながら、このように両手で答えを出していきます。
頭がぐちゃぐちゃになりますがそれでオッケーのようです。
応用編もあってこんな感じ。
マイナス2で計算します。
例えば5+2は?
7
7から2を引いて5を、言葉と両手で答えています。
頭の固い大人の方が苦手かも知れませんね。
【反応力と反射力を強化する速射突き】
ここから半分技の練習、半分アップの続きといった内容です。
”順突き速射”
これは道場では足を止めその場で、反応の練習メニューとして取り入れています。
先の脳トレと同じように、互いに向かい合い平行立ちで軽くステップしながら進んでいきます。
ペア相手が左右の手を不規則にパッと上げ、そこに手と足を同時に前に出し突きを極めます。
テンポよくポンポン技を出させ、不意に腕を回して蹴りが飛んできます。
蹴りと見立てた腕はスナップを効かせて放ちます。
どのタイミングで蹴りが飛んでくるかは分かりません。
蹴りは腕を上げてガードし、身体でしっかり外す意識。
間髪入れずに逆突きで即反撃までがワンセット。
矢倉先生曰く、手の蹴りはとにかく厳しく。手だけやったら世界基準の蹴り出せるから。
とにかく技が途切れない。
脳トレの効果でしょうか。
一瞬の判断がとにかく早い。
フェイントでいきなり左右の蹴りが出てもしっかりガードして突きを極めています。
ペア相手は左右の上段と中段にランダムに手を出し、蹴りも左右に加え直線的に顔面目掛けています。
反応の練習は当然これだけでは終わりません。
今度はペア相手が出した手の真逆に技を出していきます。
順突き真逆で頭の体操したあと、逆突きに移りました。
もちろん逆突き真逆も。
ここまで観ていて速射とは即反応することかと思っていましたがそうではありませんでした。
同様にワンツーまで繋げています。
練習を見ながら矢倉先生の激が飛びます。
「反応の練習やから台の人はもっと工夫を!」
「実際の足で蹴りを出すモーション見せて構えたり、フェイントを交えて!」
「練習でどんどん失敗しよう!」
「失敗して反省すれば良い!」
「浮くな!」
「反撃の技は深く入れ!」
「蹴りを捌く時目を離すな!」
「顔で避けるな!」
「その後!反応で極めんか!」
ここから互いに組手構えです。
冒頭から防具は全部つけてるし、拳サポを赤・青と色違いを両手にはめています。
拳サポはどんな意味があるのかなと思ってましたが、ここまで読んでいただいた方はもうお分かりだと思います。
赤なら赤
青なら青
速射で即反応
もちろんステップは止めず動きの中から素直に技を出します。
打ち込みの台の人も両手をクロスして構えたり、上段と中段使い分けるのも当然のことながら、スッと間合いを詰めたり逆に上体を後傾し深い逆上を誘ったりと工夫されています。
ある程度リズム感や裏をかくような動きのイメージを持たないと良い練習にはならないかな。
ただ受けてるだけじゃこの練習の目的を果たしているとは言えません。
応用編では、ペア相手が蹴りを入れてきます。
これまでは攻撃側が攻撃一辺倒の速射反応の練習でしたが、ペア相手が不意に蹴りを放ってきます。
自分は速射する前提にはならないこと。
仕掛ける → 外す
このバランスです。
これは実践を想定したメニューで攻撃だけでもダメだし返し技だけに頼る訳にもいきません。
攻守のバランスをしっかり持たすための練習でした。
これまで通りランダムで手を差し出し、速射反応させる中で不意に刻み蹴り。
しっかり外して速射で上段の突き技といった具合でした。
「ほらほら、試合では蹴りが飛んでくるのに、手が触れ合うこんな近い間合いでステップすることあるか?」
「考えて練習しろ!」
「試合で失点しない間合いや!」
とにかく速射の練習は盛り上がりますね!
最近ご無沙汰ですが、道場でも一気に元気が爆発しますね!
【準備と仕掛けのプッシング対応(中段突き 刻み突き 上段追い突き ワンツー 蹴り)】
ペア練です。
まず台側が相手を強めにプッシングします。
押された側が後ろ足で溜めを作って準備して構えなおすのでは無いと指導されています。
この溜めを作る準備と仕掛けが同時。
押された時にフラフラフラ。
ここで止まらない。
溜めを作る時に一瞬沈むような、この運動がダメ。
これを、
1・刻み突き
2・中段突き
3・ワンツー
4・上段逆突き
この4つのパターンで練習を繰り返しています。
まだ続きがあって、プッシング後の反撃だけでも素早く行うので難易度高めですが、反撃した瞬間に蹴りをもらう可能性が高いと言います。
突き終わりの身体が浮いた後。
ここで引き込みの上段裏回し蹴りで失点するパターンがあるので、台側は突き終わりに合わせていろんな蹴りを出してあげています。
ざっと流れを説明すると、
1・プッシング(台)
2・下がりながらも即ステップインして反撃(自分)
3・蹴りを放つ(台)
4・上体を倒しながら腕を上げガード(自分)
5・攻撃(自分)
矢倉先生は生徒の動きを観ながらアドバイス
「後ろ足の準備と前足の仕掛けを同時にすんねん」
「間合いの調整やワンツーのツーが遠かったらスリー出さんと」
「入りが大きいぞ」
「インパクトを強く」
「止まったらアカン」
「ガードしっかりあげて」
「浮いたらアカン 浮いてしまうんやったら鼠径部抜け!」
「プッシングのあと止まってる 直ぐ動きなさい」
「スイッチは上に跳ねない 下に落ちる」
「蹴ってこられても浮いたらアカン そこを強烈に間を取らな」
「追撃して当たり勝ちして出来たスペースを自分のものせな」
「当たり勝ちして残心とってたらスペース相手に取られるやん そこをさらに追撃せな」
「このスペースは流れの中で生まれたのか自分の仕掛けで作ったのか考えろ」
「攻撃極めたと思ってバックステップして与えたスペースに相手の蹴り食らったらビデオレビューしたらアウトやで」
「自分で当たり勝ちして生んだスペースはもう一度自分から仕掛けてもうひとつ取りにいかな」
「(相手に)与えるなチャンスを」
「技を極めて当たり勝ちしたあとは自分の工夫で前に突破しろ」
「体格差で当たり負けした後の工夫も考えて練習しよう」
「自分で判断しない 攻撃はしつこく」
「技を極めたあとは逆手でしっかり押す」
「ショートの間合いは残心を大きく」
「攻撃の工夫は言われる前に自分でせぇ」
「ワンツーではワンを捨てんな ワンの突破ありきのツーやぞ」
次の応用練習がこちら。
自分がペア相手に向かって背中を向けます。
ペア相手に背中をプッシングしてもらい、振り向きざまに準備と仕掛けで反撃に移る練習。
この時ペア相手にも工夫が必要でプッシングした後、間合いを詰めたり、逆に後ろに下がったり、正体で立ったり、逆体に構えたりといった具合です。
目的は瞬時に間合いの把握をすること。
いっこだけ注文です。
「絶対ある場面ばっかり練習しない」
プッシングされ振り向いての中段突き。
台が動かず中段突きを突かせることを指しています。
やってほしい練習はこういうことでした。
「どんな選手でも突きを出した時間合いを外されたり試合中失敗する。 その後の攻防が大事」
なので台側は無防備で立たない。
そんな練習はしない。
技を喰らってやるのもええんやけど、間際で下がり技を空かす。
こういう状況を作ること。
失敗した瞬間の判断をどうとるか。
ここを練習して掴んでほしい。
技を外された後のリカバリー。
自分の思い通りの試合展開から外れた時の対処を普段の練習の中から取り入れ、万が一の備えで自分の技の引き出しを蓄えられています。
想定から外れても、技を極めさせず次の攻撃でポイントを取りにいくことを指導されています。
スタンダードな練習と同時にイレギュラーな状況でも対処できるようにされています。
この辺が強い理由なんだと感じました。
指導者の創意工夫だと思います。
「自分の攻撃が外される瞬間に考え(攻撃)を切り替えな!」
「手と一緒に身体が動いてるやん 足元から!」
「何で見んねん 瞬間や判断は!」
後ろ向きでプッシングを受け、素早く体勢を立て直し(軸足の溜めと前足の仕掛け)て刻みや中段、ワンツーや蹴りで間髪入れずに動くスピードトレをされていました。
【矢倉 一先生インタビュー】
Q1・なぜこのような練習体系を作ったのか
A1・自分らのような町道場は近所の子らがたくさん集まってきます。運動神経の鈍い子らをどうしたら出来るようになるか?そこから生まれました。素材作りを意識してやっています。
Q2・練習メニューのアイデアはどこから
A1・学校の練習会で良い練習を参考にさせてもらってますが、A君はこれが出来る。B君はこれは出来るけどこれが出来ないといったように、まんべんなく出来る子にとって必要の無いメニューもあるかも知れませんが、道場生全員に取って必要になる瞬発系であったり体力作りであったり下半身強化に勝手に変わっていきました。
Q3・練習のあり方に対する考え
A3・私は常に最悪の事しか想定していません。蹴られるとか、取ったと思った時に取られてるとか。全員の悪い部分が自分の頭の中に入っています。普段の練習の中でもA君の練習観ながらB君の動きも観ています。とにかく全員を育てたい。
Q4・練習の中で常に意識させていること
A4・何の為にやってるか。このひとつです。試合でもしんどい時もありますけど自分で乗り越えていかなければいけません。挨拶ひとつ、返事の仕方ひとつ、空手の練習よりもうるさく言ってます。挨拶や行動、そのひとつひとつが人と差となってついてくると思います。空手を通じて将来、立派な大人になってもらうよう人格形成にも繋がると思って指導しています。
Q5・様々な練習で身につけたい力
A5・僕は勝つ選手って決まってると思ってます。高校の世界も大学の世界も。優勝争いする選手って人と比べて何が抜けているかっていうと、判断力とか空手の技以外の部分が人より抜けている子が勝っていくと気づいて脳トレに行きつきました。判断力・推察力・想像力の全部ひっくるめて凝縮されてる選手が、駆け引きという点で常に相手の一歩上を行っていると思います。そういう事を分かっているけど教えれない。でも生徒の成長をそこで終わるんではなくて自分が脳トレを勉強したり、調べたり面白いと感じたことをいっぱい失敗しながらやってます。自分ら指導者もいろんなスポーツの教室に通い勉強したりもしますし、生徒を新体操の教室に引き連れて学ぶこともあります。空手以外の分野でも得ることはありますので全部チャレンジの気持ちでやってます。
Q6・「脱力」の大切さ
A6・脱力があるからこそ、技そのもののスピード・技の起こりのスピード・足捌きのスピード・身体を寄せるスピード・間合いを外すスピード・見切るスピード・判断するスピード、全部のスピードが重要ですが、根っこのあるのは脱力やと思います。力いっぱい込めて速く走れる子はいないのと同じで脱力するために何をしないといけないのか。アップでも力んでいる子は高く上に飛べないんです。そんな時一番頂上で技を出させることで自然と脱力を感じさせています。飛んだあと着地した時に起こる現象が「抜く」です。空手で非常に重要な動作です。身体を前に「運ぶ」の前にある「抜く」動作です。自分の動きの中でスピードは必要ですし、相手の動きに合わせるのにもスピードは必要です。だから自分がどれだけ脱力して下へ抜けるか、空手にはこれが一番大事だと思っています。
Q7・相手にチャンスを与えない組手とは
A7・チャンスというものは来るもんやと思うんですけど、それは互いに構えあったり駆け引きし合ったりして作っていくもんやと思うんですけど、いざ技を出し合った後、攻防があった後に生まれるスペースがあります。例えば自分が当たり勝ちした時、その逆に当たり負けして飛ばされた時に2つのスペースが生まれます。前のスペースの使い方、後ろのスペースの使い方が大事です。互いに近い間合いでガチャガチャと攻防した場合、試合では「止め」がかかりますので、練習でもここで止めをかけてしまいがちです。この直後の意識が弱いから近間で蹴られたりしてしまいます。今ではVRがありますので突きを極めていても相手の蹴りを取られたりすることがあります。そういうことが無いよう、作ったスペースを動いて潰して一方的な技で終わる、相手選手の身体(体勢)が生きた状態だと反撃が起きてしまいますので相手に攻撃させないように間を潰すように指導しています。ただこれは生徒の体格によって異なり、ガタイがデカい選手は前のスペースを潰し、小柄な選手は間を切るように指導します。
Q8・不安定な状況を作り出す練習の意味
A8・絶対に相手は試合中止まってくれないし簡単にも来てくれないので、不意に来られた時・フェイントに引っかかった時のようにいろんな状況がありますので「その時になって考える」「その時に判断する」という能力を磨くためです。一瞬で状況判断出来るようにするためです。私が「下がりなさい」と指示出せばそれは練習じゃなくなります。外された詰められた状況の中でひとつの技を練習する、突然生まれる不安定な状況で自分がどういう判断で技を選択するか。判断ミスして失敗した場合、そこで次切り替えて何を選択するのか。練習中観ていて「そこや!」っていう一瞬の場面があるんですが、そこを理解出来るようになった生徒が増えてきていて試合でも優位に立っているのが現実です。
Q9・矢倉道場の強さの秘訣とは
A9・ただただ意識改革です。子供の意識改革、親の意識改革。子供の親なのか、アスリートの親なのかと親には言っています。子供らは勝つと楽しいんで勝つために。楽しんで楽しんで飽きない練習を考えています。もうほんとに居る生徒全員が強いそんな道場にピリピリ感溢れる中で楽しく強くなれる環境作りです。決して恵まれた環境ではありませんので自分らは。その中でやれることやって助け合って。で、今があると思います。
Q10・恩師木島明彦先生への思い
A10・木島監督の基で育てられ鍛えてもらってホントに良かったと思ってます。空手家以前に人として男として、そういうところを変えてもらったので。またそういう後輩も先輩もいっぱい居て良い親父だったなと思います。
Q11・空手人生で一番思い出に残っていること
A11・全少の決勝でファイナルに4人残ったこと。決勝が2コート同時にあって監督しながら、あっち気になったり。向こうも優勝してこっちも優勝しての時が一番嬉しかったですかね。
Q12・道場生に対する思い
A12・子供らに自分は活かされてると思ってます。子供らが勝ちたい思いがあるから僕らが頑張って教えるだけです。ホンマ子供らの為ですね。とにかく全員勝たせてやりたいです。強い子も弱い子も居てますが始めはみんな弱いんで。ナショナルチームにおる子も始めは拳の握り方から、帯の締め方からスタートしてます。そんな子らが社会人になって初任給でビール買ってきてくれたりで夢半分叶ってます。
Q13・子供たちへのメッセージ
A13・頑張ろうぜ!一緒にっていう意味で。
強豪道場シリーズ、学びが深いですね。
根底にあるのは "意識”
意識の持ち方ひとつで成長速度は異なります。
やる気にさせる、
その気にさせる、
優れているところを認める
変化に気づく
出来なかったことが出来るようになった時しっかり褒める
生徒のモチベーション高めて、もっともっと空手が楽しくなるように仕向けるのが自分の役割だと思います。