こんにちは!
Vol.3は組手の基本・上級編 (2015年9月号)
これも、カニ構えについてです。
カニ構えは、やや浅めの四股立ちで構えますが、どれだけ強いかを説明されています。特に非力・軽量の人は四股立ち以外考えられないとまで言われています。
立ち方の違いによる強度の差を検証します。パートナーに両手を前に出して掌を重ねてもらい、自分が片手で押してみます。
押す際、3つの立ち方を試してみます。
検証1 押してみる
①:前屈立ち、または基立ち
①はパートナーが両手で構えていれば、よほどの力の差がない限り押すことは出来ません。この場合、単純に力対力の勝負です。
②:両足を平行に取る
②は相手に対して全く押すことが出来ないはずです。
③:四股立ち
③は力を入れて押さなくても、両足の膝裏を抜くだけで楽に押すことが出来るはずです。
検証2 片足で立ち、安定感を試す
④:軸足を十分に開かず、つま先を真横に向けて膝を掻い込む
④はパートナーに肩を押してもらってみると、簡単に飛ばされるはずです。
⑤:軸足のつま先を真後ろに向けて膝を掻い込む
⑤他の構え方なら、軸足を旋回させますが、カニ構えではスムーズに持ってこれますね。
次に動きやすさについてです。
カニ構えの場合、動きそのものが速く多彩になるだけでなく、技のバリエーションも増えてきます。カニ構えで得られるメリットを挙げてみます。
⑥細かな運足と安定
足を平行に揃える場合とつま先を外に開く場合では、運足が大きく異なります。
平行に揃えて真横に構えると、前進・後退は股関節が動き、足全体で行わなければならない。
つま先を外側に向けると、膝から下だけで前進・後退が出来ます。
膝から下だけで動ける分、身体の上下動が減り、目線が安定します。加えて、つま先を開けば、他の立ち方よりも急加速・急ブレーキ・急転換が可能となり、急激な方向転換でも体軸がブレずに安定して動くことが出来ます。
⑦スウェイとダッキングが容易
カニ構えは、他と比べて上半身を振りやすく、上体だけで相手の技を自在に避けることが可能です。また相手に正面を向く必要が無いので的も小さくなります。
特に、スウェイバック時カニ構えの優秀性が顕著に表れます。基立ちベースから上体を後ろに反らしても、振り幅が小さく十分に相手の攻撃をかわせないだけで無く、瞬時に基の姿勢に戻れません。これでは反撃に遅れてしまいます。
一方、カニ構えでは上体の振りが大きく楽に振る事が出来、万が一後ろに反った時に突き飛ばされても十分に耐える事が出来る位に強く、また反撃も容易です。
またダッキングに関しても、四股立ちのまま行えば瞬間的に身体の落下を利用し相手の攻撃を回避出来ます。
【刻み突き】
①:両つま先を開いてカニ構え
つま先を開くことで”おこり”が消え且つ遠くまで届く
②:後ろ足つま先を動かさずに前拳を構えた位置からそのまま突く
後ろ足で強く蹴らない分、力みが無く技の”おこり”も少なくなる
③:突いた手を思い切り引いて足をスイッチして残心を取る
まっすぐに突き込んでも僅かに線を外す事ができ且つ次の攻撃に移りやすい
留意点
①落ちてくるものを拾いにいくイメージで拳を出す
②突きが極まった瞬間の両膝の向きに注意する
③引きと同時に、両足を浮かせスイッチする
手が先に飛び → 上体が傾いて手に乗り → 足がついてくる 感じです。
【上段逆突き】ワンステップ
①両つま先を開く
②後ろ足つま先は後ろを向けたまま床を蹴って前進
③後ろ足股関節を内旋させて突く
【上段逆突き】ツーステップ
①両つま先を開く
②後ろ足つま先は、後ろを向けたまま床を蹴って前進
③前足が着地した瞬間に前足で床を蹴ってツーステップ目
④前進移動中に突きを極める
⑤両足が着地した時点では、突いた手を引いている
留意点
①前進時に構えを崩さない
②突く時に、前手を引かずに前手に全身が寄って行くイメージを持つ
③引き手を大きく取り、カニ構えで残心を取る
補足説明です。
前手を引かない理由ですが、前進して突く時に前の手を引いてしまうと、スペースが生まれカウンターを誘発するからです。
【蹴り】
①足が高く上がる
シーソーの原理で、片方を下げることでもう片方が上がる
②遠くまで蹴りが届く
首から下を振ることで、身体を遠くに飛ばして蹴る
③相手の突きが届かない
上体を倒すので、相手から自分の顔が遠くなる
屈んで蹴る
カニ構えでダッキングすることで反撃が容易になります。
①前足での裏回し蹴り
膝を掻い込んでさらに身体を倒して蹴る
②後ろ足での裏回し蹴り
後ろの肩を相手にぶつけるように腰を切り、後頭部を蹴る
③サソリ蹴り
前足が相手の外にある時は、後ろ足で蹴る
最後に、カニ構えで最も効果的と思われることは、角度・間合い・技の軌道が多彩になり、相手にとっては予想しにくいスタイルであり、気配を察知されない点だそうです。
気配を少しでも消すことが出来れば、相手の反応は僅かに遅れる分、自分の攻撃が極まりやすくなると言えます。
こんにちは!
Vol.2は世界に見る組手 (2013年3月号)
カニ構えの続きです。ここでは、カニ構えから突けば20㎝距離を稼げると説明されています。
上体を真横にして、つま先を90度に開くと、顔の位置が10㎝ほど後方に移動します。
つまり両足の位置は同じでも、10㎝分だけ相手の突きが届かなくなり、逆突きをすれば自分の突きは10㎝伸びると言います。
つまり、構えを変えるだけで20㎝得と言うわけですね。
また、カニ構えは低リスクである理由にも触れています。
後ろ足つま先を斜め後ろに向けることで、相手の攻撃を最小限度に止められます。
攻撃を食らって最も危険な瞬間は、自分が攻撃を仕掛けた瞬間です。
相手に対し前進している時に攻撃を食らえば、ダメージは倍増します。
カニ構えでは、前足を踏み出しても後ろ足を壁としているために前足だけが、前進し、上体はその場に留まっていますので、カウンターのリスクが軽減されます。
刻み突きの時に、後ろ足つま先を前に向ける必要が無い理由を説明します。
斜め後ろにつま先を向けておけば、両足の裏全体が床に接地しているので、足裏全体で床を押す時間が長い分、結果的に床を押すエネルギーが大きくなるためです。
加えて、前足股関節の抜きや上半身の振り等、身体全体で前進することが出来る分、より速くより遠くを突くことが出来るという訳ですね。
こんにちは!
JKFanに2013年1月号から2020年6月号にかけて不定期で掲載された、月井 新先生の組手の基本を一冊に纏めた教範となります。
全11回に分けて紹介したいと思います。
Vol.1はカニ型組手 (2013年1月号)
ひと昔前の日本人選手の構え方が前提で話を進めます。
基本的には半身を取り、正中線を守ります。前足つま先は正面、後ろ足つま先は斜め前に向けています。
後ろ足のつま先が真横(あるいは斜め後ろ)に向いていると「崩されやすい」・「身体が流れている」・「後ろ足で床が蹴れない」と言った声が聞かれます。
それに対し海外選手では、相手に対して真横に構え前拳の後ろに自分の身体を隠し、基本的には両足のつま先は直角に開いています。
つまり、日本人選手は前屈立ちに近い構えに対し、海外選手は後屈立ち、もしくは四股立ちをベースにしています。
以下に相違点を挙げます。
1:上体の向き
日本人選手:正面に対し45~70°程 / 海外選手:90°に近い
2:両足つま先の角度
日本人選手:30~60°程度 / 海外選手:90°に近い
3:重心
日本人選手:やや前 / 海外選手:やや後ろ
半身の構えからの突きと、真横の構えからの突きを比較してみます。
半身の構えから基立ちで踏み込むと、前足と同時に身体全体が前進するため上体が相手に接近してしまう。
真横の構えからサイドステップで踏み込むと前足だけが相手に向かって飛び、身体を残すことが出来ます。そして、そこから腰を入れて突くので相手に取って射程圏外から突如突きが飛んでくる感覚となります。
相手のカウンターの射程圏外にいますので、刻み突きを食らう可能性が少なくなります。加えて、頭を後ろから押し込められるように入る事で、顔面が真っすぐに相手に向かっていくのではなく、線を外して突けるので二重に安全対策が取れます。
この突きで最も大切なところは、突く直前の立ち方にあります。
後ろ足のつま先が真横から斜め後ろを向いていれば、前足を飛ばしたときに身体は流れません。つまり後ろ足が「壁」になります。
これを、基立ちで構えると、前足を踏み込むと同時に身体全体が一緒に前進するので、身体が相手に早く近づくことになります。
カニ構えのフットワークのコツです。
・膝から下で動き、膝の位置は変えない
・逆突きは股関節の内旋で突き、突いた後は引き手と股関節の外旋を使い、素早く後退し距離を取る
・刻み突きに入る時も、両足を直角に開いたまま突いて良い。(後ろ足を開くことで線を外して入る効果がある)
・前足は踵から着地する
・刻み突きの後に間を切る時は、引き手と一緒に前足股関節を外旋させ、足をスイッチして後退する(次の反撃も素早くできる)
・両足のつま先を直角に保ったまま動き、必要に合わせて股関節の内外旋、肩甲骨の開閉を使って受け・突き・蹴りを行い、攻撃の後は間を切る
2022年現在の組手は、完全にカニ構えが定着していますね。
こんにちは!
競技の達人でおなじみ、月井 新先生が考案?されたステップマスター。
アジリティクロスの名称でも販売されていますが、どちらが先に出したのかは分かりません。
私は、月井先生の方で、DVDと一緒に購入しました。
触り心地はビニール製のチューブなので、柔らかいし踏んでも割れません。(まったく痛くない)
以前のブログにも触れたとおり、組手に必要なリズム感と筋持久力を養うトレーニングです。
試合中、利き構えからスッと逆構えにスイッチしただけでも、やりにくさを感じるはずです。
動きの中で技が途切れることなく、繰り出す事が出来れば相手にとっては脅威となることでしょう。
練習の効果ですが、瞬発力や動作の切り替えが速くなったり、脳と身体の調整能力が高まります。
なによりも、リズム感が上がりますので組手のアップがてら、軽く飛ぶと良い感じで試合に臨めるのではないでしょうか。
細かなステップワークが要求されるスポーツのトレーニングツールと言えます。
こんにちは!
競技の達人Vol.14 「慣性負荷の組手・振り子の原理で勝つ!編」
タイトルからして難しそうですね、、
要するに、身体を振る事によって重心移動を利用し、力を攻撃部位に集中させます。
首を支点に、下肢だけを振って相手の懐に潜る方法を紹介されています。従来の中段突きの入り方では、身体全体で相手にぶつかっていきますが、動画では足を前方に送る時、頭の位置は前進せず、前足つま先だけを前方へ向けます。この入り方だと、射程圏外なので相手の中段カウンターは届きません。理にかなった方法だと感じます。
突きは、突こうとする意識を持つと、腕が短くなると同時に力みが生じてしまい相手に反応されやすくなります。
そこで、突く意識を無くす練習方法ですが、腕を一回転させてから手を伸ばします。
振る感覚で突けるようになれば、次は拳を飛ばす感覚です。揚げ突きの応用で、肘が身体から離れるまでは中段を目標に、肘が身体から離れたら上段を目標に突きます。
この突き方で、遠くまで突けるとともに、相手に中段に潜られない効果も得られます。
実際に、通常の突き方と腕を一回転させた突き方を2画面で比較していますが、拳サポ1ケ分飛距離が伸びていました。
中段突きにも様々な突き方がありますが、上段と錯覚する中段突きの紹介です。
たとえ相手が中段突きに合わせてカウンターを打ってきても正面の相手から見ると伸びあがるように突いてくるので、上段を突いたつもりで、実際には頭の上を突きが通り抜けます。
またこの突き方は、1歩で2歩分の距離を稼ぐことが出来ます。
では、入り方の説明です。(すごく細かなテクニックです)
1・前足を踏み込む時に息を吸う
2・息を吸う時に水月を斜め上に押し上げる
3・突きを極める時に息を強めに吐く
後ろ足に「溜め」を作ったまま水月を相手上方に向け持ち上げ(フェイク)中段に潜ります。
得られる効果としては、
①突きの距離が伸びる
②相手の反応が遅れる
③上段突きと錯覚する
次に、上体を振ってカウンターを合わせる方法です。
運足と腕による受けの防御からの攻撃だけでなく、上体でかわして「上体の振り」で反撃出来ると、足でかわすよりも速い攻防が期待出来ます。
つまり、足で50㎝後退するよりも上体だけを50㎝倒す方が反応は早く、相手は近くにいるので踏み込まなくてもすぐに反撃が出来ます。
1:相手の攻撃をスウェイバックでかわす
上体を傾けるのではなく、首を使って上体を後ろに引きます。顎を引くと同時に、股関節の外旋を使い上体を倒すと、速く大きくかわせます。
2:上体を倒したまま突く
後ろ足の膝を曲げたまま腰を切ります。相手の攻撃に対して、息を吸って上体を倒し、息を吐いて突くという呼吸を伴って動くと、速く強くなります。
3-1:上体を倒して横にかわす(①上段逆突き)
息を吸って攻撃をかわし、後ろ足を外に動かして、相手の外に位置取りします。相手の前拳を、自分の前手で絡めながら反撃の突きを出します。
3-2:上体を倒して横にかわす(②後ろ回し蹴り)
後ろ足を外に移動すると同時に、蹴り足を浮かします。
3-3:上体を倒して横にかわす(③背後からの突き)
逆体相手の場合、相手の内側にダッキングしても安全にかわすことが出来て、反撃も容易です。上体を倒す時の位置取りは、外を取る事が望ましいが結果的に自分の足が内側にあっても問題は無いと説明されています。
まず、上体をかわしてすぐに相手の懐に入り、肘で相手の背中を押します。両足を踏ん張らずに、前足を軸にして後ろ足は外に回し、相手の後方から攻撃します。
続いて蹴り編です。
蹴りは自分の身長よりも40㎝高く蹴る方法を紹介されています。
①相手と密着した状態になります
②上体を相手に向かって45度方向に倒し、膝を身体の真後ろに掻い込みます
③身体の後ろから垂直に蹴り足を出し、相手の正面から蹴ります。(密着状態からの蹴りなので、両手で相手の道着を掴まないように!)
中段蹴りは、最も遠くまで届く技です。
中段を蹴る事により、
①相手の攻撃を制限出来る
②攻撃の的を散らす事が出来る
③間合いの調整が出来る
等、自分の組手の中で中段を蹴ることが出来れば、試合展開がとても楽になります。
先を取る蹴り① 足先を走らす
①後ろ足を一気に床から離す
②前蹴りの要領で前方に掻い込む
③脚を伸ばす時に腰を切って回し蹴り
注意ポイントは、足裏が床から離れた時に身体が伸びて正中線をさらさないように注意します。
真っすぐに掻い込んで蹴る事が出来たら、次は身体を倒しながら蹴ります。
この蹴りは、さらに距離が伸びると同時に、途中相手にあわせられても相手の攻撃が届かないという利点があります。体を後方に倒さず喉元を支点として腰を押し出すように蹴るのがコツです。
蹴りが極まった時、上体はほぼ床と平行になっています。
なるほど、こちらが先に仕掛けて蹴りますが、上体を倒しているのでこれならカウンターの突きは届きませんね。
横から見ると、自分の身体は「T」の字になって蹴ってます。
カウンターの裏回し蹴りの姿勢といったら、イメージしやすいかも。
上段突きは届かないし、中段逆突きは自分の膝でブロック出来ます。面白い蹴り方だと感じました。
お手本は、現フィリピン代表 月井 隼南選手と元日本代表 多田野 彩香先生です。
長かった競技の達人シリーズもこれで終わりです。
月井先生は空手道を科学的に追求し、時代の流れや技の進化とともに、常に新しい練習体系を構築されています。
12巻を超えた辺りから技術的にも高度になりますが、全巻を通して共通していたことは、「抜き」・「脱力」・「重心」・「肩甲骨」・「股関節」の使い方です。
シリーズの練習体系を徹底的の研究し、組手稽古に活かしていきたいと思います。